2023年10月、文部科学省は前年度の小中学生の不登校が29.9万人と過去最多を更新したと発表しました(令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要)。29.9万人というのは秋田市の人口と同じです。小学生のおよそ60人に一人、中学生の17人に一人の割合で不登校の子がいることになります。
ところで不登校って何なんでしょう?
どういった状態のことを指すのでしょうか。
この記事では下記のようなポイントについて解説します。
不登校とは、不登校を理由に30日以上欠席している者のこと
不登校は現在、小中学校あわせて24万人いる(でも本当はもっと多いかも)
不登校の原因は調査によってまちまち
不登校って何?
文科省の定義では、「長期欠席者のうち不登校を理由に30日以上欠席している者」のことを不登校としています。
長期間学校に行かない子は不登校以外にも存在します。
たとえば病気で入院しているとか、芸能活動をしているからとか、働いて家計を助けるためとか、最近では新型コロナウィルス感染回避のためとか…。こうした理由による欠席については不登校とは分類していません。
また、保護者の考え方で行かせない、家族の介護をしなくてはならない、外国での長期滞在、といった場合は「その他」に分類され、こちらも不登校には含みません。
上記のようなケースを除外した上で、「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者」を不登校としています。
つまり、病気でも家庭の事情でもなく、理由はよくわからないけどとにかく学校に来ることができなくてずっと休んでる子を不登校として数えます! ということです。
不登校は何人いる?
文科省の今回の調査では小学生で約10万人、中学生で約19万人いることがわかりました。小・中合わせて30万人弱。
これはだいたい秋田県秋田市や福岡県久留米市の人口(そこに住んでいる人の数)と同じくらいです。不登校だけで一つの市ができちゃいます。
しかし、この人数は上記の定義に合致する不登校を数えたものですから、実態としてはもっと多いでしょう。たとえば部分登校や保健室登校などをしている(不登校傾向にある)子たちは短時間だとしても学校に来ていますので欠席にはならず、不登校の数には反映されていません。
こうしたいわゆる隠れ不登校も数に含めると、合計で40万人以上に上るともいわれています。(不登校傾向にある子の実態調査、日本財団)
いずれにせよ、中核市の人口に匹敵する人数の不登校生徒が日本国内にいるということです。
不登校の原因は?
文科省の調査では、公立の小中学校で最も多い理由は「(本人に係る状況)無気力・不安50.0%」、次いで「(本人に係る状況)生活リズムの乱れ・あそび・非行11.9%」、「(学校に係る状況)いじめを除く友人関係をめぐる問題9.7%」「(家庭に係る状況)親子の関わり方8.1%」と続きます。私立や国立では2位以下の順位が多少入れ替わりますがほとんど同じ傾向です。
つまり、ほとんどの不登校の原因は「本人(と親)のせい」ってことになります。
…う~ん???
文科省の調査とは別にNHKが2019年に発表したアンケート調査があります。
こちらの調査でも上記の文科省と同じように不登校の要因を調べています。しかし、こちらの調査で多かった要因は、「教員との関係」が23%(文科省の同年度調査では2.2%)、「いじめ」が21%(同じく0.4%)、部活動21%(同じく2.7%)などと文科省の調査結果とはだいぶ様相が異なっていました。(この調査の内容は不登校新聞のサイトをご覧ください)
この違いはなぜ生まれたのでしょう?
答えは調査対象の違いです。文科省は教員からの報告を集計したものであり、NHKの調査は子ども自身に尋ねたものです。
皆さんとしてはどっちの数字が実態に近いと思いますか?
ちなみに筆者の体感に近いのはNHK調査の方です。
でもこれは、どちらか一方だけが正しいということではないと思います。調査対象が変われば結果が変わるのは当然ですし、立場によって見えているものが違うということでしょう。
そのように認識にズレがあることがわかったという点で、両者とも価値のある調査だと筆者は思います。
ということで、不登校の原因は調査によってまちまちです。
なんだかモヤモヤしてしまいますが、今後もさまざまな視点から調査が行われると良いでしょう。
まとめ
この記事では不登校について、その定義と人数、不登校の要因について各機関が行った調査や発表をもとに解説しました。こうして見てみると、不登校やそれに近い状況にいる児童生徒はかなり多い、ということがわかります。
今まさに学校になかなか行けないことで辛い気持ちになっている人は、同じ境遇の子がたくさんいるんだ、自分だけじゃないんだ、ということは知っておいて損はないでしょう。
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