突然学校を行き渋るようになった、仲間はずれにされている、理由のよく分からない怪我が増えた、物を失くすことが増えた…。こうした様子がもしお子さんに見られたら、いじめを受けているかもしれません。
いじめた子が許せない! 学校の先生に言わなくちゃ! と親もつい気が動転してしまうかもしれませんが、感情に任せて行動してもあまり良いことはありません。
この記事では、我が子がいじめられているかもしれないと思った時に、親ができることをまとめてみました。この記事をお読みいただき、冷静に対応していきましょう。
子ども本人の話しをよく聞く
オープンクエスチョンを使う
何と言ってもまずは子どもの話しをよく聞くことが大切です。家事や作業の手は止めて、テレビを消すなど気が散るものはなくすか、そうしたものがない部屋へ移動しましょう。
親の意見は挟まず、なるべく子どもの言うことをそのまま聞くようにします。その際、オープンクエスチョンが役に立つでしょう。オープンクエスチョンとは、「何があったの?」「それについてもっと詳しく教えて?」というように、Yes/Noでは答えられない質問のことです。このような質問を使うことで誘導的になることを避けることができます。
ただしこの際に「なぜ?」「なんで?」という質問は慎重に使いましょう。これらの言葉は質問される側が責められていると感じやすいからです。
また、年少児にとってオープンクエスチョンは答えにくい場合もあるでしょうから、その場合は選択肢を示して選んでもらう、といった方法も全然ありです。
可能な限り具体的に聞く
いつ、誰に、どこで、何を、(それに対して子どもが)どうしたか、といった点についてできる限り確認します。オープンクエスチョンとは相反することですが、最初にオープンクエスチョンでじっくり聞いておけば、上記項目のいくつかは自然と出てきていると思いますので、子どもの話の中で欠けている部分を追加で確認できると良いでしょう。
また、必ず話の記録を残しておきましょう。いじめ対応において、証拠の存在は非常に大切です。日記やメモも証拠になりますので、何かしら形に残すようにしましょう。これ以降の対処についても、「○月○日、○時、△先生に電話で相談。〜〜とのこと」など簡単で良いので記録をしておくことをお勧めします。
話してくれたことをねぎらう
子どもにとっていじめられることはプライドを傷つけます。更には、そのことを親に伝えることはチクったことになると思っていたり、親に心配や迷惑をかけまいと思ってためらわれがちです。それでも言ってきたというのは、それだけ切羽詰まっているということであり、親を信頼している証でもあります。子どもの話しを一通り聞いたら、頑張って話してくれたことを十分にねぎらい、ほめましょう。
一度に全てを話せない場合もありますし、後から思い出すこともあります。また話したくなった時はちゃんと時間を作って聞くこと、何があってもあなたの味方でいること、という2点は言葉ではっきり伝えてあげましょう。
学校に伝える
子どもの話しを聞いた後は、学校に伝えることになります。もちろん、親に話しただけで解決したり、大事にしたくないということもあるかもしれませんが、その場合でも学校には報告だけでもしておいた方が良いでしょう。
報告をすること自体が証拠になります。もし繰り返された場合はその都度報告することで、事の重大さを示すこともできます。
伝えるのは、①子どもが誰に何をされた(言われた)か、②子どもがそれをどう感じ対処したか、そして、③そのことを学校にどうしてほしいか、といった点です。③については、子どもの要望も確認した上で、保護者としての要望を伝えましょう。要望の例としては、「相手の子にも確認をしてほしい、注意してほしい」「休み時間に子どもの様子をみててほしい、そばにいてほしい」「クラス全体に注意してほしい」などが挙げられるでしょう。
再発防止策を検討する
学校に伝えたら、子どもが再び安心して学校生活を送れるようにするための再発防止策を検討しましょう。
相手の子やその親と話し合うべきか
子ども同士の話し合いをさせたり、親も集めて謝罪の場を設けるという解決の仕方がよくとられますが、これはあまりお勧めしません。相手の親も巻き込んで「言った・言わない」で揉めたり、安易な「どっちもどっち」論にもっていかれて、一方的に解決したことにされてしまう場合が少なくないからです。
それでもこの方法が採られることが多いのは、「子ども同士で話し合って仲直りしました」「学校として解決の場を設けました」という学校側の体裁を整えられるからでしょうか…。もちろんこの方法で実際に解決するケースもあるかもしれませんが、その一方で子どもをより学校不信にさせたり、子ども同士の関係をこじらせることになっているケースをよく耳にします。
大切なのは、いじめが起きない環境にすること
いじめはクラス等のグループ単位で起きます。いじめとは、いじめっ子といじめられっ子だけが問題なのではなく、その他大勢の聴衆役がいることで成り立つ現象です。クラスでいじめが起きるということは、「いじめられるのには理由があり、悪いのはいじめられる側」という空気がそのクラスにはあります。こうしたクラスの空気が変わらない以上、安心して学校生活を送ることはできません。
クラスの空気を変える手を打つ必要があります。たとえば、一目置かれているような先生がクラスをみてくれる、休み時間も先生が教室にいて様子をみてくれる、いじめを笑えない雰囲気を作る等。他の親にも協力してもらって教室や休み時間を見守り、「いじめを許さない大人がいる」ということを示しても良いでしょう。
また、いじめられた子自身にできることもあります。それは、証拠を残すことと味方を増やすことです。
証拠はあればあるほど周囲の大人を説得することができます。本来なら教室や廊下に監視カメラやマイクを設置しておいてほしいくらいです。が、それは未だむずかしそうですので、自分の身を守るための証拠は自分で集めなくてはなりません。日記やメモ書きも立派な証拠になりますので残しておきましょう。場合によってはボイスレコーダーを持ち歩くことも手でしょう。ネット上でのいじめについても、辛くてつい消したくなっちゃいますがメッセージ等は保存やスクショしておきます。
味方になってくれる人を増やしましょう。自分から挨拶をしたり、掃除を丁寧にしたり、皆が面倒臭がることをやってみたりしましょう。たとえ友達になれなくても、「この人はいい人なんじゃないか?」と周囲に思わせられれば大成功です。「悪い奴なんだからいじめてもいい」といういじめの空気を崩せるからです。こちらの対策方法も含めて、いじめについては下記HPがとても参考になりますので、ぜひそちらも見てみることをお勧めします。
http://www.ijimetotatakaou.com
学校は休ませるべきか?
ポイントは、①子ども本人が学校に通える状態かどうか、そして②学校が安心して過ごせる場になっているかどうか、ということです。
まず、①子ども自身が心身ともに元気な状態であることが不可欠です。睡眠や食事はちゃんととれているか、情緒的に落ち着いているか、自宅や学校以外の場所では楽しく過ごせているか、勉強にはその子なりに取り組めているか、といった点が満たせていれば子ども本人の準備は整っていると考えて良いでしょう。
そして、より重要なことが②学校が安心して通える場になっているか、という点です。クラス内で別のいじめが起きていないことは当然として、担任をはじめとした教職員と子どもとの間で信頼関係ができているか、授業中や休み時間に具体的な防止策があるか、もしまた何かあった時にすぐ相談できるか、などの再発防止策がちゃんと整っているか確認しましょう。
①②の両条件が整わない状態で学校に行かせることは、「骨折している足で無理やり走らせる」「スラム街に置き去りにする」と同じようなものです。両条件がそろい、安心して通えるようになるまでは休ませることをお勧めします。
またもし数ヶ月たっても状況が良くならないような場合は転校も選択肢に入ってくるでしょう。いじめを理由とした転校はちゃんと認められています(例えば、こちらの文科省の通知を参照)。
まとめ
いじめられた子の傷ついた様子をみると、親としては相手の子や学校を責めたくなる気持ちが湧いて当然です。いじめは学校という環境だからこそ起きやすく、どの学校や教室で起きてもおかしくない現象です。でも、だからこそ、どの子にとっても安心して通い学べる環境が必要です。そうした環境を作るのは、学校の先生だけでなく親の役割でもあると思います。「どうしたら子どもたちが安心して教室で過ごせるだろう?」という視点に立ち、学校と敵対するのではなく協力してこの問題に取り組むことは、親にとっても大きな学びの機会になるのではないでしょうか。
この記事では、我が子がいじめられていると思った時の対応方法についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!
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